大判例

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大阪地方裁判所 昭和42年(ワ)3505号 判決

原告

吉谷道子

被告

清光運輸倉庫株式会社

第一 主文

一、被告は原告に対し、二二〇万円および内金二〇〇万円に対する昭和三九年七月一八日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

三、この判決一項は、かりに執行することができる。

第二 原告の申立て

被告は原告に対し、二二〇万円および内金二〇〇万円(慰謝料)に対する昭和三九年七月一八日(本件事故翌日)から支払いずみまで年五分の割合による金員(遅延損害金)を支払え。

との判決ならびに仮執行の宣言(主文同旨)。

第三原告の主張

一、傷害交通事故発生

とき 昭和三九年七月一七日午後八時三〇分ごろ(天候晴れ)

ところ 大阪市城東区今津町九二五番地先交差点付近路上

事故車 普通貨物自動車(大一う六四三九号)

運転者 訴外井上慶治

受傷者 原告(当時一〇才)

態様 事故車が交差点西北角より西方約一〇メートルの地点(車庫入口)から西向きのまま交差点東南角に向かつて相当の速度で後退し、東南角より東方約五メートルの地点に立つていた原告を車体後部ではねとばし受傷させた。

二、被告の責任原因(自賠法三条、予備的に民法七一五条)被告は事故車のほか諸種の貨物自動車約二〇台を所有し、陸上貨物運送事業を営むものであるが、訴外井上は被告の運転手として運送事業に従事しており、当時業務のため事故車を車庫から引出し後退するに際し、後方を十分確認せず誘導も受けないで、かなり速い速度で急激に後退した過失により本件事故を発生させた。

三、原告の損害

(1) 受傷部位・程度、治療期間、後遺症

骨盤骨折、陰部損傷の傷害を受け、昭和三九年七月一七日から同年一二月二二日まで一五九日間入院したほか、形成手術のため翌四〇年八月一日から同月三〇日まで再度入院加療した。

外傷は一応治ゆしたが、骨盤の変形を残しびつことなり、骨盤痛、下肢痛があるだけでなく、骨盤の変形狭少のため妊娠、分べんの障害が心配される状況にある。原告はまだ子供であるためその見通しは困難であるが、そのほかの結婚生活にもさしつかえがあるかも知れない。すくなくとも非常に不利な条件を背負つている。

(2) 数額

(イ)慰藉料 二〇〇万円

(ロ)弁護士費用 二〇万円

第四被告の答弁

一、原告がその主張する日時場所において交通事故により受傷したこと、当時原告が一〇才であつたことは認めるが、右事故は被告従業員の運転する自動車によるものではなく、他車によるものである。

二、原告の受傷部位・程度、入院期間は認めるが、後遺症の程度および損害額は知らない。

第五証拠〔略〕

第六当裁判所の判断

一、傷害交通事故の発生と被告の責任

(1) 原告主張の日時場所において原告が交通事故にあい、その主張のような傷害を受けたことは当事者間に争いがない。

(2) そこで進んで、右交通事故の内容につき判断するに、〔証拠略〕によると、つぎの各事実が認められる。

(イ) 本件事故現場交差点は、各幅員約七メートルの南北道路と東西道路が直角に交差する場所であり、南北道路は舗装されていたが、東西道路は未舗装であつたこと。

(ロ) 被告の運転手訴外井上は、右交差点西北角からすこし西に入つたところにある被告のガレージより被告保有の普通貨物自動車を引出し、西向きのまま東側道路まで後退させようとしたが、当時付近に外燈がなく暗かつたので、同僚の渡辺卓史に南北道路に対する警戒を頼み、その合図により東側道路まで左斜めに後退したこと。

(ハ) そのころ原告は、右交差点東南角から数メートル東に入つた路上に立ち東方を向いて犬を呼んでいたが、後方から衝撃を受けて転倒したこと。

(ニ) 訴外井上は原告の激しい泣き声に驚きただちに車からおりて同女を抱きかかえ、かけつけてきたその母親キヨ子に対し自分がひいて受傷させたことを認めたこと。

(ホ) その後被告は原告の治療費を支払い、見舞品を贈るなどして陳謝したこと。

以上認定の各事実に原告の受傷部位・程度を総合すると、訴外井上が被告保有自動車を運転して後退したとき、たまたま前記場所に立つていた原告に車体後部が衝突し、ために転倒した原告の腰部付近を後車輪でひいたものと推認するのが相当である。

これに対し被告は、原告の前記受傷は被告保有自動車の運行によるものではなく、他車の運行に基因する旨主張し、証人渡辺卓史は、訴外井上の運転する自動車が交差点を横切り後退する直前北から南に通過した自動車が原告に傷害を与えたものであるかのような証言をするけれども、前認定の各事実、なかんずく(ハ)、(ニ)、(ホ)の各事実に照らすと、右証言もいまだ原告の受傷が被告保有自動車の運行に基因するとの前認定を左右するに足りず、他にこの認定を動かしうる証拠はない。

(3) とすると、被告は自賠法三条本文により、原告の後記損害を賠償する義務を免れない。

二、原告の損害

(1) 受傷部位・程度、治療期間は当事者間に争いがなく、〔証拠略〕によると、事故直後恥骨々折のため恥骨結合離断が認められ、また膣壁損傷があり損傷部から恥骨を触知しうるほどであつたので、事故翌日離断部固定手術等を受け、約一ケ月間発熱が続いたこと、再手術は下腹部の瘢痕形成、陥没部位への脂肪補充および大陰唇形成手術であり、術後は経過良好であつたが、日数の経過とともに下腹部瘢痕、陥没、大陰唇の不対称がある程度現われてきていること、現在骨盤の変形強く歩行が不自然であり、骨盤痛や下肢痛が続いており、学校での体育のうち鉄棒はできない状態であること、原告は現在一四才であるが骨盤の変形を気にし、水着や薄い衣服を着るのを極度に嫌い、将来の結婚についても悲観的であり、看護婦になりたいなどと両親に悲痛を打ち明けていることが認められる。

(2) 数額

(イ) 慰謝料 二〇〇万円

前認定のすべての事実をしんしやくした。

(ロ) 弁護士費用(着手金) 二〇万円

本件事案の内容、損害額、大阪弁護士会報酬規定に照らすと右の額をもつて相当と認める。

三、結論

原告の本訴請求はすべて理由があるので、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 谷水央)

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